「花筐」
こんにちは。
今日は、三好達治の詩集、『花筐』を紹介します。
「裏日本の海は、初めてだった。
漁船が岸に何十艘となく浮んでいるのは、壮観であるが、いまどき漁に出られないのだろうか。
半分毀れて傾いているのが多い。配給の油が無いのだろう。
十分も歩いたのだろうか。
岩と海の突端で道は塞がり、右手の石畳の坂道を上り、細い小径の脇を入ってゆくとぽつんと一軒建っている暗い家が左手にあった。
離れ小島のような丘の上である。
見渡す限り海に囲まれた寂しい所にその家はある。
―ここです。
あの人は、言った。まさかと私は思った。
白い土蔵の壁が崩れ落ち、垣根もなく、外からまる見えでカステラの空箱を利用したらしい板片に『三好寓』と、行書で書いてあった」(萩原葉子/昭和41年「天上の花・三好達治抄」)
・・・詩集『測量船』(昭和5年)で世に出た三好達治(明治33~昭和39年、64歳没。大阪生まれ)が、住みなれた小田原を離れ、遠く三国へ逃れて来たのは、太平洋戦争も深まった昭和19年3月のことです。
以前から知っていた同町出身の秦秀雄(美術評論家。井伏鱒二の小説「珍松林に囲まれた東尋坊。三好達治は日本海の海鳴りに接した一福井県三国町品堂主人」のモデル)の紹介によるものです。
その目的は、次第にきびしくなる戦局を避け、同時にまた、学生時代から思いつづけてきた萩原朔太郎の妹アイ(萩原葉子の母)を迎え入れて、心機一転、文学に専念したいがためでした。
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