「平家伝説」 4
半村良が長編伝奇小説のなかで一貫してこだわり続ける〈生命の流れ〉のモチーフがここでも物語の結末を彩ります。
日本海に突き出た海鵜の頭部にたとえられる能登半島は、古代より大陸に向けてのアンテナとしての役割を果たしており、彼の地との交渉の跡が半島随所に見られます。
また近世では北前船の寄港地としてさまざまな人や物資が行き交う回廊となっていました。
半村はこの作品において、近代になって取り残された能登を眠りから覚まし、他との交渉の場としての古代よりの機能を、宇宙との接点という壮大なスケールで再現しようと試みているかに見えます。
そしてそこは空間の交渉のみにとどまらず、〈生命の流れ〉という時間を超えてのメッセージが届く場としても意味付けられているのです。
彼は、この作品と同時進行で大作『妖星伝』を書き継いでいます。
時間をテーマにしたようなこの物語で黄金城という宝の山は、結局この世とは別の時間が流れる「随」と呼ばれる閉じた時の国のなかで発見されます。
あるいは、時忠、時国と、「時」を名に冠する平氏一族に作者はこの時期呼び寄せられたのかもしれません。
・・・半村良は昭和48年10月、「産霊山秘録」で第一回泉鏡花文学賞を受賞しました。
鏡花を「SF作家のお手本ともいえる作品を書いた人」としてあこがれていたようです。
その文学賞の関係者たちと安宅の関近くの料亭でカニを食べたときのエピソードが『女帖』の中に出てきます。
コレステロールを公害物質と間違えて憤然とする女中さんに対して、その熱烈な郷土愛と自分の店の料理への誇りとに感動しています。
能登を題材としたものとしては他に、全編巧みな能登方言でつづられた作品集『能登怪異言章』(昭和62年)があります。
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